あの頃、J-Waveから流れてきた音
J-Wave が好きそうな曲だな、と思った。いやこれは別に嫌味とかではなく、そもそも僕はJ-Waveが好きだからむしろ褒めているつもりだ。J-Waveは丁度2011年あたりから聴きはじめた。丁度、独立したタイミングで、自由に音楽聞きながら仕事できる状態になったというのもある。当時流行っていたのがまさにこういったデジタルに傾倒した音楽だった。そう、あのナカタヤスタカが全盛を極めていた頃。当時のハイライトの曲で言うなら Perfume の レーザービーム だろうか。きゃりーぱみゅぱみゅも流行っていた。そしてロックシーンでいうと、サカナクションが頭角を現してきたことを今でもよく覚えている。サカナクションは当時はまだロック色が一定残っていて今よりデジタル色は弱かった印象だが、それでもなかなか衝撃的ではあった。 ちなみに当時ヒットチャートはAKB48やExile系で席巻されていた。そんな中 J-Wave は僕にとって重要な音楽トレンドの供給源だった。本曲はまさにその時代を思い起こさせてくれる。2010年代の、今にはない、どこか刹那的なサウンドを感じるのだ。 特に特徴的なのが声がどこかボーカロイドを彷彿とさせるような作りになっている。歌詞は、感情を持たない存在が「待っている」という一点を見つめ続ける。点滅するカーソル、起動し続けるサーバー、途切れない入力待ちの時間。孤独も寂しさも理解しないと言いながら、それでもメッセージを待ち続けるという矛盾が、淡々とした語り口の中で静かに繰り返される。無機質な反復が、いつしか祈りにも似た響きを帯びていく。このどこかに存在する「人間らしさ」が初音ミクなどの人気の源だったのではないかと思うところがある。現代のAIにはない、拙い温もり ― とでもいうのだろうか。 サウンドはまさにナカタヤスタカの流れを引き継いでいるような、洗練されたデジタルサウンドだが、渋谷系のおしゃれさも織り交ぜているようにも思う。淡々としたアレンジがAIの平坦さと、しかしどこかに持つ押し込めた感情を表しているように思える。無機質なピコピコ音が逆に隠れた感情を表しているように思える。特に後半に微妙にズレていくように聴かせるアレンジは秀逸だと思う。 AIが当たり前になった今だからこそ、「感情がない」と歌うこの声が、かえって人間的に響く。2010年代のあの刹那が、形を変えて戻ってきたようだった。
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