「これでヨシ!」と言える強さ ― 等身大のメッセージを再考する
「等身大のメッセージ」なんて言葉はとてもチープにもてはやされ、ある種インターネットではバカにするような向きもあったが、その大元となった Mr.chldren は意外と「等身大」みたいなワードは使っていないという話もあるから、ネットの通説なんていうのも、結局現実社会と変わらず嘘が多大に混じっているものだなあと思ったことがある。そもそも等身大の歌詞みたいなものは、別に等身大というワードを使うだけじゃなく、全体の世界観だと思う。 本曲「これでヨシ!」は、等身大の自分を見つめ直すメッセージが多分に含まれている曲だ。曲全体はメロウなヒップホップ的なリズムと語りかけるように歌い上げる女性シンガーが特徴的だ。歌詞は些細な攻撃性を隠さず、さらけ出している。しかし、攻撃性というのは本当の攻撃性ではなく、自分の芯に立ち返るための強さと感じる。聴けばわかるが、タイトルにもある「これでヨシ!」というフレーズがサビの最後にリフレインされているのがとてもこの曲の最大のハイライトになっている。自分に言い聞かせて前を向いて歩けば良い、というメッセージがしっかりと打ち出されている。 これらの歌詞をしっかりと意味づけしているのがメロディとアレンジだろう。メロウなアレンジの上で自由に語るように自由に歌っているのが、まさに自分の思考や行動が誰にも束縛されるものでもないということを表現しているように感じる。98年にMISIAがデビューしてから日本J-POPシーンは空前のR&Bブームとなったが、その時代からの流れをくむようなサウンドに仕上がっている。 今のJ-POP シーンが何の時代なのかがいまいち自分の中では答えがないが、なんとなくアニソンとJ-POPの融合の時代なんだろうなと思っている。その前夜、2000年代はいわゆる「本格派シンガー」「ディーヴァ」みたいなボーカルやそれに準じた楽曲がもてはやされたのは紛れもない事実だ。なぜ本格派シンガーが流行ったのか、みたいな流れの話はまた別にしようと思う。 MISIAはパワフルなボーカルが特徴的だが、双璧をなす宇多田ヒカルはウィスパーボイスが特徴的だった。「これでヨシ!」のボーカルの表現はその中間というところで、それは中途半端という意味ではなく、よりシンプルに感情を揺さぶってくるように感じるのだ。 誰かの「こうあるべき」に疲れたとき、この曲の「これでヨシ!」がそっと背中を押してくれるはずだ。
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