受け継がれた叙情 ——80〜90年代メロディックハードロックの血脈
この曲を最初に聴いて感じたのは、80〜90年代メロディックハードロックの系譜である。 Scorpions が世界に示した叙情的なメロディ感覚は、疾走を競う一派とは別に、もう一つの大きな流れを生んだ。歌を主役に据え、緻密なコーラスワークと磨き抜かれた哀愁で聴かせる潮流だ。Bonfire や Pink Cream 69 がその土壌を耕し、Zeno Roth のもとで歌った Tommy Heart が Helge Engelke らと結成した Fair Warning が、その様式を一つの頂点へと押し上げた。とりわけ日本で熱狂的に支持されたあの叙情性を、本作もまた確かに受け継いでいるように思う。 イントロのストリングスから突き刺すようなギターへ、そして静寂の中から立ち上がるボーカル。その厳かな導入は、さながら Fair Warning の "Children's Eyes" を思わせる。やがてサビに入った瞬間、各パートが一体となって押し寄せるバンドサウンドが何とも心地よく、緊張から解放へと一気に視界が開けていく。 楽曲は終始、叙情的な旋律で彩られている。映画でいえばクライマックス手前、葛藤と決意が交錯するあの瞬間を描くように構築されたメロディは、窮地に立たされた旧幕府軍の急先鋒・新選組副長 土方歳三の心中を、見事に音へと翻訳してみせる。負けると知りながら刃を引かない男の覚悟と、その奥にある一抹の哀しみ。そのどちらもが、この旋律には宿っている。 中間のギターソロは、まさに王道のフレーズを決めてくる。伸びやかなメロディで聴き手を惹きつけながら、最後のサビへ向けて加速していく。この様式美こそ「これぞハードロックのギターソロ」と呼ぶべきもので、定型でありながら少しも古びていない説得力がある。 懐古ではなく、あの時代の叙情を現在の一曲として鳴らしてみせた——そんな手応えのある仕上がりだ。
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