まとまりの良さと既視感のあいだで
THEアイドルソング!と言いたくなる一曲だ。AKB48が提示した「楽曲に変な癖はいらない」「スタンダードであること」「どこかロックであること」――その方程式がすべて組み込まれていると言っていい。サビではしっかりバッハ進行が使われていて、聴き手の耳が「ここが山場だ」と迷わず受け取れる。歌詞も女の子同士の何気ない会話や、そのとき感じたことに終始している。大きな物語ではなく、日常の温度で共感を取りにいく。その姿勢がまた現代のアイドルソングらしい。 構成は、良く言えばしっかりまとまっている。SUNOでありがちな「1コーラス目と2コーラス目のAメロがまったく別のメロディになってしまう」という現象もなく、歌詞の組み立てでうまくカバーしているように見える。このコントロールが意外とできていないSUNOクリエイターは多い。作り手は何度も聴くから気にならないが、初めて聴くリスナーにとっては「さっきのメロディはどこへ行った?」という小さな違和感が積み重なり、結構なストレスになる。ポップスの気持ちよさは、反復と予測可能性に支えられている部分が大きい。ここをクリアできている点は個人的に高く評価したい。 一方で、逆説的ではあるが、悪く言えば特徴のない曲とも言える。特にサビは、使い古されたメロディの焼き増し感が否めない。思えば、AKB48の楽曲を初めて聴いたときも「90年代に戻ったな」と感じたのを覚えている。それより前、モーニング娘。は「LOVEマシーン」のような突拍子もないメロディで世に出てきた。鈴木あみは小室哲哉のプロデュースのもと、当時最新のサウンドで攻めてきた。90年代後半から00年代前半は、J-POPが脱歌謡曲を目指していた時期だったと思う。そんな中で現れたAKB48は、正直とても古く感じた。 しかし結局、J-POPはそこへ戻ってきたし、そこから独自の進化を遂げた。あのときの揺り戻しは、結果的に成功だったのではないかと思っている。韓国が欧米のトレンドを積極的に追いかけ、世界市場へ打って出ていったのに対し、日本は自国の文脈の中に閉じこもるようにして独自路線を走り出した。ガラパゴスと揶揄されもしたが、その閉じた生態系こそが、いまのJ-POPの濃さを育てたとも言える。それが功を奏したということだろう。 ただ、その路線に安易に乗っかると、ただの「古い曲」に聴こえてしまうのも事実だ。この曲はその爆弾を秘めていると思う。かといって奇をてらえば良いかというと、そうでもない。王道を王道のまま新鮮に響かせること。それがいちばん難しいのだと思う。 全体としては、まとまった良い曲だと思う。
レビューを読む →