
曲紹介
スマホをスクロールすれば数分で欲しいものが届く。蛇口をひねるように音楽が流れ出す。そんな便利さに浸りきった日常へ、静かな問いを投げかけるところからこの曲は始まる。ぬるま湯のような安全圏、予測できる心地よさ。その裏側で確実にすり減っていく何かを、メロウに揺れるヒップホップのビートが淡々と映し出していく。 やがて語りは、情報も乏しかったかつての時代へと巻き戻る。指を黒く染めながら棚を漁り、全財産を賭けるようにして一枚を選ぶ。中身の分からないその一枚を抱えて家路を急ぐ足取り、ビニールを剥ぐ指先、盤面に針が落ちるまでの張りつめた静寂。ヒップホップのフロウを纏いながらもどこかメロディックに流れていくボーカルが、その瞬間の胸の高鳴りを一音ずつ確かめるように紡いでいく。 スピーカーから走る衝撃、そこにあったドラマ。トレンドの外側で、傷だらけの溝に指を滑らせ、まだ名前のない輝きを掴もうとする。予定調和を壊し、自分だけの一枚と出会うための宛てのない旅。柔らかなリズムの上で、探究への陶酔と冷めることのないロマンが繰り返し立ち上がってくる。朝焼けの街を抜けていく後ろ姿に、聴き手もまた自分の針を落としてみたくなる、そんな余韻を残す一曲だ。
投稿: kazumae
レビュー
まだレビューはありません。最初のレビューを待っています。