fragile

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ニュー淡路

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曲紹介

スローテンポで揺れる8ビートのドラムとベース、こもった質感のピアノ。シンプルな構成の上に、シティ・ポップとAORが溶け合うサウンドが広がる「fragile」。どこか渋谷系の気配も漂わせながら、夜の都市の空気をそのまま音に閉じ込めたような一曲だ。 描かれるのは、本物と偽物の境界が曖昧になった夜の街。SNSのタイムラインも、ネオンに照らされた交差点も、誰かの見せたい景色と隠したい本音が重なり合う場所として等しく並ぶ。確かな言葉も、約束らしい約束もなかった関係。振り返ればその時間さえ幻だったと言えてしまうほど曖昧で、それでも消えてくれない熱が残り続ける。 思い出そうとすると形を失い、忘れようとすると鮮明になる。存在そのものではなく、存在した痕跡。触れられないのに確かに見える残光——“afterglow”。「いっそ、最初から存在してよ」という身勝手な願いまで抱えながら、それでも壊れたままの綺麗さを、終わらない夢のままに抱きしめようとする。 本物だったかどうかは最後まで分からない。それでも、その夜が残した余韻だけは嘘じゃなかった。フェイクでできた街の中で、唯一確かだった熱の記憶を描く、儚くも美しいシティ・ポップ・ナンバー。

投稿: kazumae

レビュー

浮遊する感情、静かなAORの夜

都会の静けさとモヤがかった湿度を感じる ― 第一印象はこれだった。ニュー淡路というクリエイターの作品には明るさやシンプルさの裏に見え隠れする陰鬱というか哀しみというか、そういったところが特徴的だ。本曲はその良さがしっかり表現されているように思う。シンプルなリズムとアレンジであるがゆえにメロディの良さというのが非常に重要になるのだが、日本人が好みそうな叙情的なメロディがしっかりと組み込まれている。 静かでありジャジーなピアノからスタートした後に、シンプルなドラムが入ってくる。ボーカルは静かで、ソロにはエレピが入ってくる。AORだろう。非常に都会的なサウンドだ。まず思いついたのが Boz Scaggs や Sting の系譜だ。僕はこの手の音楽がかなり好きというのもあり、本曲はかなりハマってしまった。でもメロディはかなり今風にも感じる。Vaundy の 踊り子 に通じるものがあるとも思った。 歌詞の世界観は一貫して「浮遊」だ。ここに自分はいるが、本当にいるのだろうか?いやこの世界自体が本当にあるものなのだろうか?そのような心がどこか遠くから客観的に、そして虚ろに見ているような、そんな心情が描かれているように感じた。「見慣れたはずの孤独がシャープになる」「交差点に置き去りの感情」などスマートだが、強烈に揺れ動く感情を巧みに表現したワードが並ぶ。歌詞にはいろんなパターンがあると思っているが、個人的に一番好きな歌詞のパターンは1つの事象を様々な角度から表現する歌詞だ。本曲「flagile」もただただ1人の人の感情を様々な角度から描いている。主人公はもしかしたら夜の街角でただ立っているだけかもしれない。しかしその人の心のなかに動くものはとても激しく、しかし静かでもある。大きな気持の揺れを歌詞が表現し、静かさを楽曲のアレンジが補完している。「壊れても、綺麗なままで」のフレーズはメロディと言葉が完全に掛け合わさって、リスナーに突き刺してくる一節だ。 めちゃくちゃ良い曲だと思うがゆえに気になるところがある。最後のコーラスの後半が他のコーラスとメロディが変わってしまっているところだ。いや変えるのは構わないのだが、他のコーラスとあわせたうえでのアドリブにしてほしかった。これがあることで消化不良になってしまった感は否めない。これができていれば本当に名曲に入る部類だったと思う。 とはいえ、実に素晴らしい曲に出会えた気分であることに間違いはない。細部への注文がつい出てしまうのも、それだけこの曲が「あと一歩で名曲になる」ポテンシャルを持っているからこそだ。ニュー淡路というクリエイターの次の一手に、いやが応でも期待が高まる。この夜の余韻を、また味わわせてほしい。

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